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カンボジア情報

熊本地震、イオンモール熊本爆発事故から考えるカンボジアの建物の安全性とガス設備のリスク

この度の熊本地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

また、イオンモール熊本で発生したガス爆発とみられる事故では、お亡くなりになられた方がおられ、多くの方が被災されました。謹んでお悔やみとお見舞いを申し上げます。

私は不動産開発業者の立場として今回の事故を非常に注視しています。また、ガス工事は私の専門分野でもあるため、技術的な観点から考察しています。

なぜ、これほど大規模な爆発が発生したのでしょうか。

(遮断弁付きメーターの一例)

通常、ガス供給設備の始点にはガスメーターが設置されており、急激に大量のガスが流出した場合には、メーター内の遮断弁が作動してガスの供給を停止する仕組みになっています。この仕組みは一般住宅でも同様で、遮断弁は瞬時に作動します。

また、大型商業施設では主メーターだけでなく、各店舗にも遮断機能を備えたガスメーターが設置されているのが一般的です。

そのため、地震の揺れによって配管の接続部がわずかに緩んだ程度のガス漏れだけで、今回のような大規模な爆発に至る可能性は低いと私は考えています。

大きな爆発が発生するためには、配管の破断や接続部の外れなどにより、大量のガスが一定時間漏えいした可能性も考えられます。もちろん、これは現時点での一つの推測に過ぎません。

一般の方は「店舗でガスを使用していた」と聞くと、厨房機器やガスコンロ、ガスオーブンを思い浮かべるかもしれません。しかし、ガスは厨房設備だけではなく、ガスヒートポンプ(GHP)による空調設備にも利用されています。熊本のイオンモールがGHPを採用していたかどうかは現時点では分かりませんが、採用していた場合には施設全体のガス使用量は相当なものになります。

私が事故の第一報を聞いて最初に思い浮かべたのは、主メーターの遮断弁が正常に作動しなかった可能性です。その原因がメーター自体の不具合だったのか、あるいは地震による影響だったのかは現時点では分かりません。

一方で、商業施設そのものの建物やガス設備に問題がなかったのかという点も重要な検証項目です。

爆発事故が発生したイオンモール熊本(旧ダイヤモンドシティ・クレア)は、2005年10月10日に開業しており、事故当時は築21年目(開業から約20年10か月)でした。また、2016年の熊本地震では施設も被災し、その後2018年7月に大規模な増床・リニューアル工事が行われています。

しかし、その際にガス設備がどのように更新・改修されたのか、また今回の事故現場にガス漏えい時に自動停止する遮断システムがどのように設置・運用されていたのかについては、現時点では公表されておらず分かっていません。

同施設は1995年の阪神・淡路大震災以降に建設された建物であり、当時の耐震基準や設備の安全性に対する意識の高まりを踏まえて設計・施工されたと考えられます。そのため、ガス設備についても一定の安全対策が講じられていたものと思われます。

それにもかかわらず今回のような大規模な爆発事故が発生したことから、設備そのものだけでなく、施工状況や維持管理、あるいは想定を超える何らかの要因があった可能性も含めて、今後の調査結果を注視したいと考えています。

さらに、ガスを供給し設備を管理していた事業者についても注目しています。

2026年7月30日、経済産業省九州産業保安監督部および高圧ガス保安協会は、イオンモール熊本へLPガスを供給していた事業者に対して聞き取り調査を実施したことを公表しています。しかし、企業の特定につながる社名などは現在も公表されていません。

ここで、私たちがカンボジアで開発しているコンドミニアムのガス設備について触れたいと思います。

カンボジアでも一般的に使用されているのはLPガスです。コンドミニアム全体へ配管を通して各住戸へ供給する方式と、各住戸のキッチン下にLPガスボンベを設置する方式があります。

しかし、私たちが開発する「Jシリーズ」では、LPガス設備を採用しておらず、LPガスの使用も認めていません。

理由は、安全性を最優先に考えているからです。

日本では、LPガス設備の設置や機器との接続工事は、国家資格である「液化石油ガス設備士」の資格を持つ者が施工することが法律で定められています。ゴムホースをガス栓に差し込む程度の軽微な作業を除き、配管工事やガス機器の設置・取り外しは有資格者が行わなければなりません。

一方、カンボジアではLPガスボンベの交換や機器との接続を、専門資格を持たない一般の居住者や作業者が行っているケースが少なくありません。

(LPガスボンベのイメージ図)

さらに、市場で流通しているLPガスボンベには、中国やベトナムから輸入された中古品が多く見られ、品質管理や安全性の面でも不安が残ります。

このような理由から、私たちは開発当初よりLPガス設備を採用せず、オール電化仕様とすることで火災やガス爆発のリスクを可能な限り排除してきました。安全性を最優先に考えた結果であり、カンボジアでは非常に珍しい取り組みです。

ここで誤解のないように申し上げたいのは、私はガス設備そのものを否定しているわけではありません。私はガス工事を専門分野として長年携わってきた立場であり、ガス設備の利点も十分に理解しています。

ガスには、火力の強さやランニングコスト、災害時のエネルギー分散など、多くの優れた長所があります。日本のように法令や施工基準が整備され、有資格者による施工・定期点検・維持管理が適切に行われている環境では、非常に優れたエネルギー設備であると考えています。

しかし、カンボジアの現状を見ると、施工管理や設備管理、安全基準、使用されるLPガスボンベの品質など、日本と同等の水準にあるとは言えません。

そのような環境では、特に多くの人が生活する高層コンドミニアムにおいてLPガス設備を採用すべきではない、というのが私の考えです。

今回の熊本地震、そしてイオンモール熊本で発生した爆発事故を受け、ガス設備の設計・施工・維持管理の重要性を改めて認識しました。同時に、私たちが安全性を第一に考え、オール電化という仕様を採用してきた判断は間違っていなかったと感じています。

事故原因については、現在も関係機関による調査が続いており、今後の調査結果を待つ必要があります。

本稿は、ガス設備に携わる立場から技術的な可能性や安全対策について考察したものであり、事故原因を断定するものではありません。今後公表される調査結果を注視し、その内容から学ぶべき点があれば、今後の建物づくりや安全対策にも生かしていきたいと考えています。

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